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  • 執筆者の写真lily nac

【episode】-Aeonian Reflection Mana-

その地に足を踏み入れるのは実に40年ぶりのことだった。

40年それは第七霊災を人々が乗り越えるには十分すぎる時間であった。

すっかり生まれ変わった故郷の地を踏みしめながら彼女はため息をつく


「ここはもうあたしの帰る場所でないのかもしれないね」


冒険者を引退し、身を寄せる場所を探して故郷に帰ってきたのだが、どうも居心地の悪さを感じてしまう。冒険者になって一度も帰らなかったことによる罪悪感かもしれない。

セカンドライフは故郷で過ごす。そんな夢は半々あきらめつつ、それでも小さな歩みを止めない。彼女にはどうしてももう一度、行きたい場所があったのだ。

かつての町の中心にあった時計塔、その地下にあった劇場は彼女にとってよく家族と劇を見に行った思い出の場所だ。


表通りから外れ、いわゆる旧道を歩いて行ったその先に果たしてまだその劇場はあった。

その建物は戦火に巻き込まれ美しい見た目だった外壁は剥がれ落ち、内部の鉄骨もむき出しの哀れな姿になっていた。

街に住人に時を知らせていた時計も壊れてしまい全く動く気配もない。みんなに愛されて親しまれていた思い出の場所は、見捨てられただ朽ちるのを待つ廃墟になっていた。

すっかり変わってしまった建物を眺めながら彼女の中には奇妙なシンパシーを抱く。


「あんたも、あたしもすっかり老けちまったね」


もうすこし、せっかくだから最後の冒険をしようじゃないか、

地下に降りてみる。そこには時が止まったままのように劇場はかつてのまま残っていた。

ふと彼女の中に「誰ももう手を付けてないのならあたしが住んでしまってもいいのでは」という考えがよぎった。ただの妄想と吐き捨ててよいほどの思い付き、しかしそれは内部を探索していくにつれ大きくなっていく。


「馬鹿なことを考えちゃいけないよ」


そう言って彼女は大きくかぶりを振った。いくら思い入れの強い場所だからって、廃墟を最後の住処にするなんて馬鹿げている。



次の日、彼女は再び時計塔に足を運んでいた。今度はありとあらゆる工具や材料を荷車に乗せて...

 

馬鹿げた考えだということはわかっていた。

なんだって自分はこんな廃墟を一人で修理しているんだ。

あれから彼女は貯めていたギルで工具を買い、毎日時計塔に通っては少しずつ壊れているところを直していった。

思い出の場所が失われかけていることの焦燥。

誰にも見向きもされなくなったことへの同情。

自分なら直すことができるという自信と傲慢。

こうした感情が巡っていたが、それでも彼女をこうして行動させるには説明できなかった。

漠然とした説明のできない使命めいたものを感じながら、彼女はいろんなところを直していった。


冒険者時代にクラフターに勤しんでいたことが功をなし、多くのことは彼女の持つスキル「匠の早業」を使うことで何とかすることができた。どうしても手が行き届かないところはギルドに依頼を出して補った。


「ふん、ようやく住めるようになったかね」

 

異変に気が付いたのは彼女が劇場裏に住み始めてすぐのことだった。



彼女が改造していたのは劇場裏を自分が住めるようにしただけだった。しかし、ある時から建物全体が少しずつ直っていったのだ。


劇場はかつての輝きを取り戻し、いつでも公演ができるように、止まっていた時計もついには昔と同じように時を刻み始めた。

止まらない不思議な現象に彼女はふとあることを思い出す。


「アルジクの量り、まさかただのおとぎ話だって聞いてたのに、まさかこの塔がそうだってのかい」


はるか昔に聞いていた神話、彼女の脳裏にそのおとぎ話がよぎった。


神々に愛されし地、エオルゼア。古来より信仰されてきた神の1柱がのこした遺物に彼女は知らぬうちに手を加えていたのだ。

彼女はこれより非常に数奇な人生を進めることとなる。

しかし、彼女は名が歴史に置いて語られることはなかった。なぜなら彼女の奇妙な日常は他人の目に移ることがなかったからである。

 

ラノシア地方のはずれに、街に囲まれるように建てられた時計塔があるという。街のシンボルと皆に愛されてきたそれだがある噂話があった。


「時計塔に棲む亡霊」


誰が言い出したのかは定かではない。

そういったいわくつきの劇場なのだが、不思議と多くの観客が演劇や演奏会を観に足を運んだという。


これは『Aeonian Reflection Mana』に纏わるストーリー...

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